ヘルメス学と象徴

ヘルメス学を学問として捉えることの難しさは、そこで用いられる独特の言い回しに由来するところが多いでしょう。例えば、エメラルドタブレットというものがありまして、これは錬金術の作業を表現する代表的な文書なのですが、「下にあるものは上にあるものに似ており、上にあるものは下にあるものに似ている」などと述べられています。

ヘルメス学はラテン語でHermetica(ヘルメティカ→ヘルメスの学問)と言いますが、ヘルメティカというと単独で錬金術の事を指すことも多々あったようです。そんなわけで、錬金術はヘルメス学の代表的な分野なのですが、錬金術のみならずヘルメス学全般に関わる要素として、上で述べたような言葉使いを挙げることが出来ます。

「下にあるものは上にあるものに似ており、上にあるものは下にあるものに似ている」と書かれていても、「下」とか「上」って何だろう?あるいは「似ている」って厳密にはどういうこと?などなど、何か煮え切らない感じがありますよね。実は、錬金術に限らず、魔術であれ占星術であれ、ヘルメス学関連の文書には、そうした表現が多々出てくるのです。

学問においては、言葉は出来る限り一つの意味を持つように厳密に定義されることが重要です。ところがヘルメス学では、むしろ一つの言葉がたくさんの意味の広がりを持つ、つまり象徴的な言葉の使い方が多いのです。したがって、ヘルメス学で扱われるような内容は学問的かというと、なかなかそうともいえない側面があるのです。

キリスト教の力が絶大だった中世では、ヘルメス学関連分野は異端でありましたので、当然、身を隠すためにあからさまな表現は避け、象徴的な言葉使いで内容をほのめかさざるを得ないという理由もありましたでしょう。ただし、それ以外の理由もありました。それは、ヘルメス学が主題とする内容が、象徴的な表現でしか伝えられないような性質のものであるということです。

そうしたヘルメス学の主題については、なぜ魔術や錬金術、あるいは占星術を実践するのかという話と関わってくる話題になります。これについては、魔術や錬金術等の文章がある程度貯まってきた時点でお話しようと思います。

Comments are closed.